『金色のガッシュ!!2』では、「術のビン」という新たな概念が登場しました。本記事ではその構造・仕様・精製の意味など、作中の描写から考察を試みます。術の仕組みに焦点を当てることで、物語全体に潜む設定の奥行きが見えてきます。
こんにちは、スーパー四心です。
ガッシュ2で新たに出現した概念に『術のビン』というものがあります。
スーツケースに入った透明なビンで、中には魔物の術が保存されています。
今回はこの『術のビン』について考察します。
2種類の術のビン
まず、作中には2種類の術のビンが登場します。
ビンの術って2種類あるんだよな(Page.31 7P)
①精製された「術のビン」
冒頭で述べた、スーツケース入りのビンがこちらです。
カードがスーツケースを開き呪文を唱えることで、ビンから術が出ます。
初登場はPage.1の13Pで、ワイグがラシルドを使用しました。ビンには雷の紋章が入っており、雷の術が保存されていることがわかります。
ゼリィの「王様の術」という台詞から、術のビンには所有者が紐づいており、たとえ同じ呪文でも別の魔物の術であれば互換性はないと考えられます。
②精製されていない「術のビン」
Page.8でキャンチョメが使用した術「ポルク」も、呪文を唱えて発動する点では①と同様です。
しかし、彼の使用した術のビンは①とは明らかに形状が異なります。また、ビンの中には飴玉のような丸い物体が入っており、属性を示す紋章も見られません。
多分オレ達の持っているものとは違う 精製する前の奴だ
術も数回使えば消えると思う(Page.8 17P)
この鼻毛ブーの説明から、以下の点が読み取れます。
- カードが使用しているビン(①)は“精製済み”であり、使用回数の制限がない
- 一方、キャンチョメのものは“精製前”であり、使用回数に限りがある
Page.31のバリーの台詞でも裏付けがとれています。
奴らが持ってる精製した術は奴らしか使えない
精製前のはオレ達でも使えるけど数回で無くなる(Page.31 8P)
Page.1でジギーが使用した「ガンズ・コファル」も②ビンだと思われますが、以下の点で矛盾が生じます。
- ビンの形状が精製済みのものと同じ
- 「ガンズ・コファル」っぽい宝石の紋章が見える
この矛盾を解決する描写は今のところありません。
強引に解決するなら、「ビンの形状は関係がない」「魔界では使える」の2点が有力です。
精製されていないビンの作り方
「精製されていない術のビン」の製造方法はPage.8でキャンチョメの兄・ハンソデが語っています。
コレを!!無我夢中でもぎとり
ビンに詰めたお前の「術」だ(Page.8 21P)
このセリフから、術は敵に完全に奪われる前に手に取って(もぎとって)、ビンに詰められる固体であることがわかります。

術はなぜ魔物に戻らないのか?
魔界における「術」の使い方
外伝『友』、そしてゼリィの台詞から、魔界にいる魔物は本がなくても、自ら呪文を唱えることで術を出せます。
人間界では本の持ち主が呪文を唱えることでしか出なかった術ですが、魔界では魔物の自由意思で発動可能です。
え!?私その本がなくても術を出せるよ!!(Page.3 28P)
そして、術を取られると、魔物は術を出せなくなります。
そっか…私もあいつらに術をとられちゃったから…(Page.3 28P)
テッドも!チェリッシュも!!レインも!!!
みんな術の力を取られちゃった!!!(Page.3 29P)
術の奪われ方
Page.31にて術を奪った敵の正体は「ベスミラテオ」という大きな竜であることと、取り戻した術を直接魔物に戻しても、また奪われてしまうことがガッシュの口から語られました。
だが術は直接魔物に戻さぬ方が良い
術を魔物に戻して使えるようになるとする
その状態で敵の本拠地に戦いに出たとしよう
すると「ベスミラテオ」という大竜が現れ 再び私たちの術を奪ってしまうのだ(Page.31 5~6P)
Page.31の描写から、奪われた術は紋章のついた光の球のように見えます。
魔物の体内から光の球が抜け出し、ベスミラテオが飲み込むことで奪われると推測しますが、飲み込まれる前であれば回収、保存ができそうです。
コレを!!無我夢中でもぎとり
ビンに詰めたお前の「術」だ(Page.8 21P)
⚙「精製する」とは何か
せい‐せい【精製】
[名](スル)
1 十分に念を入れてつくること。「材料を選び精製した品」
2 まじりものを除いて、純良なものをつくりあげること。「原油を精製する」
作中の精製はおそらく2の意味ですが、ガッシュが「ビンの中の術は威力が低い」と言っていることから、精製は威力を上げる手順ではないことがわかります。
仮説
術ごとに所有者がいるという話をしました。
同じザケルでも、ガッシュのザケルとゼオンのザケルは威力、精度が異なります。つまり「同じ呪文」ですが、「同じ術」ではありません。
『金色のガッシュ!!』において同じ呪文を使用する魔物の組み合わせは多くありませんが、下記の組み合わせでも同じことが起こると想定できます。
- ロブノスとエルジョ:ビライツ
- マルスとボルボラ:ガロン
- アシュロンとエルザドル:ディガル・クロウ
精製とは、術に込められた「個人」の部分を排除し、術そのものの力を取り出すことであると想像できます。
ガッシュのザケルからガッシュ成分を取り除けば、純粋なザケルが出来上がります。
ガッシュのザケルにはガッシュの才能や練度が含まれていますから、それを取り除くことで威力が落ちることにも説明がつきます。
さらに、「精製されたビンはカードにしか使えない」というバリーの台詞から、本来魔物ではないカードにも使えるよう、カードの因子(またはそれに準ずる何か)を埋め込むことで、カードにしか使えない術のビンを作り上げていると考えられます。
結論:精製とは「術+個人」から「個人」を取り除き、カードの因子を埋め込むこと。威力は落ちるが、カードにしか使えない術のビンが完成する。
以上を図示したものがコチラです。

疑問点
この考察が正しいとすると、以下の疑問が残ります。
- カードの因子を埋め込まれた「術」が、本に戻されると魔物の術に戻り、奪われないのはなぜか
- なぜ精製前のビンは回数制限があるのか(この仮説が正しいとすると、術に個人は残っている)
- 「ビンの術は威力が低い」とあるが、作中そんな描写は見当たらない(ガッシュと清麿の主観に過ぎない)
①の解決
①ですが、「そういうもの」と理解するのが正しい気がします。
『金色のガッシュ!!』において、敵に本を奪われ、呪文を唱えられてもその術は発動しないことがわかっています。(1巻 LEVEL.5 110~111P)
清麿の本を奪った細川が「ザケル」を唱えても、ガッシュの術は出ませんでした。
同様に、清麿がゼオンの本を持ってガッシュに向かって「ザケル」を唱えても術は出ないと考えられます。
以上から、本には術の使用者とパートナーを識別する機能が備わっており、「パートナー・呪文・使用者」が一致したときのみ術が出ることがわかります。
やや強引ですが、術を本に戻すことで、埋め込まれたカードの因子は本の識別機能によって無効化され、「元の持ち主」の呪文としてロックされるのだと考えられます。
②の解決
私の仮説が正しいとすると、キャンチョメの使用した術のビンにはキャンチョメ成分は残っているはずです。
自身の術を自分で使用しているのに、回数に制限があるということは「魔物の体内を出た術は無限ではない」ということです。
精製されていないビンを使用した魔物が、今のところキャンチョメしかいないので断定は難しいですが、作中描写を見る限りこう考えるのが一番説得力があります。
③の解決
「ビンの術は威力が低い」ということは、カードが使用する術は本来の威力が出ないということです。
私の仮説が正しいとすると、成分を抜き取り使用者も違うため当然に思えますが、作中にそんな描写はありません。
ワイグ、レビー、ジリオン、ボビーなどの術は高威力で、普通にダメージを受けています。
一応、サイフォジオについてはレビーが「弱い回復術ね(Page.8 29P)」と言っていますが、「本来の威力に比べて弱い」なのか、「サイフォジオ自体が弱い術」なのか、区別はつきません。
Page.2で、ワイグが使用したザケルガを見た清麿はこう言っています。
ウソじゃない!コレはザケルガ
オレが知ってる ガッシュのザケルガ(Page.2 27P)
「…だが大した威力じゃない‼」などの台詞があれば納得がいくのですが、このザケルガは建物の壁を破壊するほどの威力を持っています。
個人的にはこれが一番マズい問題点で、Page.31で突然出てきた「ビンの術は威力が低い」は、後々本に呪文が戻った際、本来の力・使用者であることをアピールする以上の理由が見えません。
つまり、バオウ・ザケルガがガッシュの本に戻った時、
「これが…王のバオウ…」
とか、
「フン…(バオウを見てほくそ笑むブラゴ)」
みたいなシーンを描きたいために作られた後付けだと考えています。

🧠 まとめ
- 術のビンには「精製前」と「精製済み」の2種類が存在する
- 精製済みビンはカード専用で使用回数無限、精製前ビンは魔物も使用可能だが回数制限あり
- 「精製」とは、術から使用者要素を取り除き、カードの因子を埋め込む処理と考えられる
- 術を本に戻すと、使用者・パートナー・呪文が一致しない限り発動しないため、再奪取は困難
- 「ビンの術は威力が低い」という設定は、作中描写との矛盾が多く、後付けの可能性がある
🔍 次回考察への導入
術のビンという概念について、作中から読み取れる情報・描写はあまりにも少ないです。
「術のビンは威力が低い」という台詞を目にしたとき、「…本当か?」という疑問が、今回の考察の出発点になりました。
設定としては面白く、可能性もある。だからこそ、今はまだ明かされていない裏側があることを、どこかで期待してしまいます。
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『金色のガッシュ!!2』に関する考察記事をテーマ別にまとめました。

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