『金色のガッシュ!!2』カードの術はなぜ“詠唱”があるのか?魔物との違いを考察

『金色のガッシュ!!2』に登場する敵組織『カード』。これまでも何度か考察してきましたが、読み返すたびに、どうしても引っかかるセリフがあります。

たとえば、ギルが『ルカ・ヴォール』を唱え、ワイグの体から炎が噴き出た場面(Page.6 16P)。
その直後、清麿はこう驚いています。

術名だけで呪文の詠唱がなかった!!?
力との同調が強まれば印だけで術を出せるのか!?(Page.6 16P)

このとき、私は思わず「え、詠唱してるじゃん?『ルカ・ヴォール』が呪文じゃないの…?」と戸惑いました。

ここでいう「呪文の詠唱」とは、術名とは異なる、より長く儀式的な言語による前置きの呪文のことです。
清麿の言う「詠唱がなかった」という驚きも、おそらくこの“前置き呪文”が省略されたことを指しているのでは?

今回の記事は、その違和感を出発点にしています。

目次

オードファンだから感じた違和感

『術』と『呪文』が意図的に使い分けられている?

漫画のコマ画像を貼れないため、読者の方にはぜひ原作を読み返してほしいのですが、この戦闘でギルが使用した術は以下の7つです:

  • ラー(合力) … 炎の術の力(ビン)をワイグに与える
  • ガン・ロゥ … ワイグが炎の球を多数撃ち出す
  • ウォーロウ … ワイグが炎の壁を貼る
  • ルカ・ヴォール … ワイグから炎がたくさん出る
  • ガズリング・ジョルト … 炎の拳がいっぱい出る
  • ガウ・ギ・オーヴァ … 炎の拳のスピードが増す?
  • ボ・ルダー・オルグ・ワイグ … ワイグの最大術らしきもの

このうち『ルカ・ヴォール』『ガズリング・ジョルト』『ガウ・ギ・オーヴァ』は、術名のみで発動しており、詠唱の描写がありません。
それ以外の術については、ページ上で明確な詠唱が描かれています。(※詠唱の全文は別記事にて掲載)

『金色のガッシュ!!』における「術」と「呪文」

ここで一度、前作『金色のガッシュ!!』において、『術』と『呪文』という言葉がどう扱われていたかを振り返ってみましょう。
読み返すと分かる通り、旧作では基本的にこの二つは同義として使われていました。

いくつか代表的な台詞を引用します。

頼む!!新しい呪文よ、キャンチョメを助けてくれ!!
こんな時に約に立たない術だったらブッ殺すぞぉ!!!(10巻 LEVEL.193 258P)

ティオも新呪文がでたようだが、
防御の術が主体の子だ(10巻 LEVEL.186 114P)

ここからわかるように、『術』と『呪文』は明確に区別されていたわけではありません。

とはいえ、厳密に定義するなら、『本に書かれている文字』は『呪文』であり、その呪文を唱えた結果として現れる現象が『術』だと言えるでしょう。

劇中では「呪文を唱える」という表現は多く見られますが、「術を唱える」という表現は存在しません。
つまり、「唱える」という動詞の目的語となるのは常に『呪文』であることがわかります。

整理すると、

  • 本に記された“ザケル”という文字 → 呪文
  • 呪文を唱えて出る雷撃のエネルギー →

ここで、『術』を“技名”に置き換えると、より直感的に理解できるかもしれません。
つまり、「ザケル(技)」を出すために、「ザケル(呪文)」を唱える。そういう関係です。

結果として、術名と呪文が同一だったことから、旧作では両者は実質的に同義として扱われていたと考えられます。

ガッシュ2における『術』と『呪文』

魔物の『術』と『呪文』

ここからは、冒頭で挙げた違和感を解き明かすための考察に入ります。
まず確認しておきたいのは、『金色のガッシュ!!2』においても、魔物側の『術』と『呪文』は基本的に同義であると見てよい点です。

たとえばモ・ポルク発現時のセリフを振り返ると、

新しいページ!!
新しい呪文!!(Page.9 36P)

え?僕どうなったの?
この術どんな力なの?(Page.10 6P)

やはり、本に記されるのが『呪文』であり、その結果として発動する現象が『術』です。
そして、それらを媒介しているのが『本』です。魔物の術は、本の力によって『呪文』から『術』へと変換されている、と解釈できます。

カードの術

話をカードに戻します。
まずはギルが使用した術を、今回は“詠唱の有無”という観点からもう一度整理してみましょう。

  • ラー(合力) … 炎の術の力(ビン)をワイグに与える
  • ガン・ロゥ … ワイグが炎の球を多数撃ち出す
  • ウォーロウ … ワイグが炎の壁を貼る
  • ルカ・ヴォール … ワイグから炎がたくさん出る(詠唱なし)
  • ガズリング・ジョルト … 炎の拳がいっぱい出る(詠唱なし)
  • ガウ・ギ・オーヴァ … 炎の拳のスピードが増す?(詠唱なし)
  • ボ・ルダー・オルグ・ワイグ … ワイグの最大術らしきもの

術名と呪文が同一と仮定すれば、これらもまた「術=呪文」として扱えるはずです。
実際、ギルはこれらの術名を”唱えて”発動しているため、魔物側との違いはここでは見られません。

しかし、一部の術、とくに『合力(ラー)』は、発動前に追加で呪文詠唱を必要とする描写があります。しかも、この詠唱は唱えるカードごとに異なっているのです。

なぜカードは呪文を唱えるのか

では、なぜ魔物は術名だけで発動できるのに、カード勢は術名とは別に長い呪文を唱えなければならないのでしょうか?

もっとも自然で、違和感の少ない理由は、カードは魔物ではないからです。
彼らは魔物のように『本』とつながっていません。

つまり、魔物は『本』の力によって
呪文 → 術
という変換が自動的に行われますが、カードたちはこのプロセスを自力でこなす必要があるのではないか?そんな仮説が立てられます。

言い換えれば、カードたちは“本”という媒介を持たないぶん、術を発動するにはより複雑で長い呪文が必要になるということです。

術を発動するための“始動キー”が呪文

この“始動キー”という構造は、他作品にも例があります。

たとえば『金色のガッシュ!!』と同時期に連載されていた『魔法先生ネギま!』では、魔法の発動に『始動キー』と呼ばれる呪文詠唱が存在していました。

作中の魔法使いたちは、それぞれが固有の『始動キー』を持っており、それを唱えてから使用したい魔法の呪文を詠唱します。

たとえば、主人公ネギ・スプリングフィールドの始動キーは、

ラ・ステル マ・スキル マギステル

です。
この「ラ・ステル〜」にあたる詠唱部分こそが、カード勢が唱える長い呪文に相当すると考えられます。

つまり、カードたちは『本』による術の補助がないため、術の発動に際して“始動キー”としての呪文詠唱が必要なのではないか?

魔物は「本」によって術を媒介・管理されている一方で、カードは「自らの詠唱」で術を制御している──この違いは、両者の存在構造そのものの違いを示唆しているかもしれません。

🧠 まとめ

  • 『ルカ・ヴォール』発動時、清麿が驚いた「詠唱がなかった」は、“術名以外の前置き呪文”が省略されたことを指すと考えられる
  • 『金色のガッシュ!!』では「呪文=術名」として使われていたが、『カード』の術では詠唱が分離している描写がある
  • 魔物は「本」の力で呪文→術の変換が行われるが、カード勢にはその媒介がない
  • そのため、カードは術の発動に“始動キー”としての長い呪文を必要としている可能性が高い
  • カードの詠唱は、それぞれのキャラ固有のものであり、魔物とは異なる体系で運用されていると考えられる

🔍 次回考察への導入

カード勢の術体系には、まだまだ謎が多く残されています。
たとえば、術の発動に必要な条件、呪文の構造、さらには術名の共通語彙化の有無など……。
次回は、カードの詠唱文に含まれる言語的特徴や意味構造に注目し、「カード語」の正体に迫っていきます。

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