こんにちは、スーパー四心です。
『金色のガッシュ!!2』に登場するカードは魔物ではない。魔物ではないから本の媒介が使えず、術の使用には呪文の詠唱を必要とする…そんな記事を書きました。

作中から拾ったカードの呪文まとめもありますので、興味のある方は下記ページから御覧ください。

これらの執筆中、私は思いました。
カードや長老ミラージュの呪文は、意味のある言語なのでは…?
今回の記事はそんな思い付きから始まっています。
『合力』発動の呪文から考察する
まずは、作中でギル、鼻毛ブー、リーザが使用した『合力』から読み解いていきましょう。
作中でカードの使用した術は多岐にわたりますが、今のところ『合力』は共通した術です。
その効果は、
術のビンと対象となるカードを融合し、術の力を対象に付与する。
狩りに失敗すると、術者か対象のどちらかが死ぬ。(ペナルティと呼ばれる)
となっています。
術者と対象の関係を整理すると下記になります。
術者(魔導士) | 対象 | 結果 | 死亡者 |
---|---|---|---|
ギル | ワイグ | ワイグの敗北 | ワイグ |
鼻毛ブー | レビー | レビーの敗北 | 鼻毛ブー |
リーザ | ジリオン | ジリオンの敗北 | ジリオン |
それぞれの『合力』を確認する
ギルの合力
ギルの詠唱呪文(クリックで拡張)
出典:Page.6 10〜11P
アー・ラーゴ・(我が声と)
ルーザ・レイ・オン(指の印にて)
バーリズ(力へと)
ガン・リー(命ずる)
ゼム・オール(その力に)
ジン・ジール・ジーズ(依り代を与え)
ザーリングス・マイラ・ウ・(抑圧された力を)
リンギラーラ・ビルズ(解き放たん)
ガル・オーズロー(その代償として)
リードラニ・ズー(己が意志を)
アリデルス・ミオゴモス・(我に預けよ)
ラー(合力)
鼻毛ブーの合力
鼻毛ブーの詠唱呪文(クリックで拡張)
出典:Page.10 38〜39P
トウフォ・ア・(髪なる)
ルーニーダオ(分身を)
ラービャーリンチ(呪符と化し)
アンハンセイ(我が言霊と)
ウォン・ギル・オ・(字印にて)
ゼーバー(力へと)
ハイ・ローチー(命ずる)
ミン・バイラー(依り代たる)
ディオ・タンザー(御体へと)
ユン・レビリオラ(抑圧された)
チャオ(力を)
リーグン・デューシー(解き放たん)
バン・ビリア(その対象と)
イーツオ(して)
タータオリーシェム(己が意志を)
グァイグ・シェン(我に預けよ)
リーラオ(合力)
リーザの合力
リーザの詠唱呪文(クリックで拡張)
出典:『金色のガッシュ!!2』Page.19 11P〜15P
リリムス・アリアスト(闇の血脈を)
ミーラルズ・エム・エリ・ズ(旅するものよ)
セラムロ・ジ・ラームレンドト(7つに分かれた)
スミヌエラ・ホンミス(器の者共)
ゼブリット・ギ・(ゼブリットの)
ニラスエロ・セセミヌケニ(血肉を分けた)
ギーラ・ザン・リー(強き絆の)
ドロス・スロー・ザビルドブ(その名を唱える)
ジリオン リーザ ガム ジモダ エガラヴィッツ オーム アモン(ゼブリット・ブラザーズの名前)
ビーシナイン・ズ(抑圧された)
エーエニアルロエフ(器の力よ)
ギリス・アリス・ローロー(依り代となる)
シーヨウギ・ヨウ(器の形に)
リップ・ザン・ザード(力を変えよ)
フォー・ノット(我が体の)
セイタメ・フルス(4つの口が)
ラーラスビ・グリアタ(転力への)
スタイダ・ストーム(手助けをせん)
アーゼム・リー(※日本語訳なし)
ゾン・アーリアス(※)
ドムルズギャロ(※)
ディーバード・ル・(※)
リンゼルド・ベリン(※)
ドルーハ・ジンガー(※)
ガーザード(※)
ゴーロード(※)
ダムスゼム・アリア(※)
ゲン・ダス・ロル(※)
バイズド・ジーラ(※)
ザムスデラ・ウロウス(※)
ハチア・ゲマゴケロクザ(抑圧された力よ)
エンチェント・オ・カカセド(転生し次なる)
ローム・オーラ・リー(形となりて)
サマリー・オリヒゾム(解き放たん)
ケール・オンド・ジ(契約により)
ゾミミ・ク・コウコ(己が意志を)
リ・ア・カ・ルタドルオソ(我に渡さん)
エイシャント(合力)
この時点でだいぶ毛色が違うことがわかります。
ギルはどこか英語の命令形のような響きを持ち、鼻毛ブーの呪文は抑揚と語順が中国語的。リーザは音の響きが南欧の言語、たとえばポルトガル語やフランス語のようにも聞こえますが、造語感が強く、はっきりとは特定できません。
とりあえず、それぞれの呪文から似たような文章を取り出して表にしたものが下記です。(沙也加作成)
日本語訳 | ギル | 鼻毛ブー | リーザ |
---|---|---|---|
抑圧された力を/よ | ザーリングス・マイラ・ウ | ユン・レビリオラ | ハチア・ゲマゴケロクザ |
己が意志を | リードラニ・ズー | タータオリーシェム | ゾミミ・ク・コウコ |
我に預けよ/渡さん | アリデルス・ミオゴモス | グァイグ・シェン | リ・ア・カ・ルタドルオソ |
依り代を/たる/となる | ジン・ジール・ジーズ | ミン・バイラー | ギリス・アリス・ローロー |
解き放たん | リンギラーラ・ビルズ | リーグン・デューシー | サマリー・オリヒゾム |
力へと | バーリズ | ゼーバー | |
命ずる | ガン・リー | ハイ・ローチー | |
合力 | ラー | リーラオ | エイシャント |
全く一致しておらず、手掛かりすら不明です。
少なくともこの3人の呪文は共通の言語や語彙からできているものではなく、あえて現実世界に当てはめるなら「英語と日本語とアラビア語くらい離れている」ことがわかりました。
結局のところ、3つの呪文を並べて精査しても、明確な共通語彙や構文は見い出せません。
1つの呪文の中で規則性がないか確認してみる
ギルの呪文
こういうのは代名詞や固有名詞から検証すると相場が決まっていますので、まずはギルの呪文から見ていきます。
その/我/力
呪文の中で何度か出てくる単語はこの3つなので、まずはこの3つを含む呪文を取り出しします。
呪文 | 日本語訳 | キーワード |
---|---|---|
アー・ラーゴ・ | 我が声と | 我 |
バーリズ | 力へと | 力 |
ゼム・オール | その力に | その/力 |
ザーリングス・マイラ・ウ・ | 抑圧された力を | 力 |
ガル・オーズロー | その代償として | その |
リードラニ・ズー | 己が意志を | 我 |
アリデルス・ミオゴモス・ | 我に預けよ | 我 |
まず、「その」という代名詞に注目してみます。
ギルの詠唱には、「ゼム・オール(その力に)」と「ガル・オーズロー(その代償として)」という、似た構文のフレーズが2つ登場します。いずれも「その○○」という訳がついていますが、対応する語が「ゼム」と「ガル」でまったく一致していません。
仮にこの呪文が言語として成立しているのであれば、「その」に相当する語句は繰り返し使われるはずです。代名詞は意味を共有するために何度も使われる基本的な語であり、それが一致しないのはやや不自然です。
また、「オール」と「オーズロー」は音がやや似ています。「力」「代償」という訳がついていることから、名詞にあたる部分と考えることもできます。つまり、「ゼム/ガル」が代名詞、「オール/オーズロー」が名詞という構造は想像できますが、仮にそうだったとしても「ゼム」と「ガル」に音の共通点や語の構造上の連続性は見られません。
少なくとも、同一人物の詠唱の中でさえ代名詞が共通化されていないという事実は、言語としての一貫性があるとは言いがたいものです。
同様に、「我」「力」も一致する単語は見当たらず、やはり言語として整った文法や語彙はないことがわかります。
この時点で、「呪文は意味のある言語である」という仮説はかなり怪しくなってきます。むしろ「意味があるように見えるでたらめの呪文」である可能性が高まってきたように感じます。
鼻毛ブーの呪文
鼻毛ブーはあまり共通の単語がありませんが、できるだけ似通ったものを取り出しました。
呪文 | 日本語訳 | キーワード |
---|---|---|
アンハンセイ | 我が言霊と | 我 |
ゼーバー | 力へと | 力 |
チャオ | 力を | 力 |
タータオリーシェム | 己が意志を | 我 |
グァイグ・シェン | 我に預けよ | 我 |
全く一致していません。「我」という一人称の代名詞すら、共通して使われていないのです。
「我が」「我に」など、助詞によって形が変わる可能性も考えましたが、そもそも「我」にあたる語句がどれなのかすら不明です。
鼻毛ブーの場合でも、代名詞は統一されていないことがわかります。
リーザの呪文
呪文 | 日本語訳 | キーワード |
---|---|---|
ビーシナイン・ズ | 抑圧された | 抑圧 |
エーエニアルロエフ | 器の力よ | 器/力 |
ギリス・アリス・ローロー | 依り代となる | 器 |
シーヨウギ・ヨウ | 器の形に | 器 |
リップ・ザン・ザード | 力を変えよ | 力 |
ハチア・ゲマゴケロクザ | 抑圧された力よ | 抑圧/力 |
リーザの呪文はさらに複雑で、そもそも日本語訳が併記されていない呪文も含まれています。
可能な限り意味の通った部分を拾い上げて比較してみましたが、やはり共通する語句はひとつも見つかりませんでした。
たとえば「抑圧された〇〇」という表現では、〇〇には必ず目的語となる名詞が続くはずですが、その部分の単語すら一致していません。
また「器の力よ」と訳されている「エーエニアルロエフ」も、一語で文を構成しており、どの部分が名詞でどの部分が修飾語なのか、語の構造を見極めることすら困難です。
結論
カードの呪文を複数の角度から検証してみましたが、現状では解読できるようなものではなさそうです。
少なくとも『合力』という一つの術の中においてすら、共通語彙や文法的な規則性は見つかりませんでした。
登場人物ごとに語感も構成もバラバラであり、「言語として体系化されている」という仮説は、現時点では否定的に見ざるを得ません。
ただし、それでも“意味があるように感じられる”呪文であることは間違いありません。
語感やリズムがそれっぽさを演出しているのだとすれば、むしろ「精巧なでたらめ」としての完成度は高いと言えるかもしれません。
魔法を唱えるという行為に、説得力や没入感を与えるために練られた呪文言語。
それがカードたちの術の正体なのかもしれません。
🧠 まとめ
- 『合力』の呪文は、ギル・鼻毛ブー・リーザで語感も構造もまったく異なる
- 「我」「力」「抑圧」などの基本語句ですら一致せず、共通語彙は確認できなかった
- 同一呪文内で代名詞や文法構造が統一されておらず、言語としての一貫性は見られない
- 現時点では「体系的な言語ではなく、意味があるように見せた演出上の呪文」である可能性が高い
🔍 次回考察への導入
今回は『合力』という一つの術に絞って呪文を比較しましたが、カードたちが使用する他の術にも同様の傾向が見られるのか、引き続き検証していきます。
また、長老ミラージュの呪文や「ビン」という存在の構造にも、今後は目を向けていく予定です。
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